コラム

風の谷のナウシカの「ふかい」テーマ [2011/08/10]

 

こんにちは。
 
宮崎駿監督の代表作「風の谷のナウシカ」。
 
この映画を何度も観られたことがあるのではないでしょうか。
 
 
なんとなく観ていると、王蟲(おうむ)という森の神か下僕のような動物と気持ちを通わせるナウシカが、
有毒の瘴気(しょうき)を出す腐海(ふかい)という森を焼き尽くそうという人々と対決し、
命を懸けて衝突を防いだことで、伝説の救世主となったという物語であるように感じます。
 
 
ところが、この「風の谷のナウシカ」には、まだまだ実に深いテーマが潜んでいます。
 

腐海は徐々に広がり、人間の住む世界をどんどん狭めているため、

腐海を古代の巨神兵という危険な技術を持って燃やし尽くそうという人々が悪者のようにも見えますが、
ナウシカの住む「風の谷」の人々も腐海の植物の胞子が村に来ないよう、焼き払っています。
 
 
腐海に触れずに、残された世界を「運命」として受け入れ、
死さえも受け入れながら生きるなんていうことはできるものではありません。
 
 
しかし、ナウシカは腐海は人間を滅ぼすためのものではなく、
人間が汚した大気や大地を1000年以上の時間をかけて浄化する森であることを知ります。
 
瘴気という毒は腐海が浄化作業を行う途上で排出されるものであり、
地球の浄化を進めていくためには、腐海が浄化作業を終えるのを待つしかないのです。
 
 
果たして、人間は腐海の拡大を手をこまねいて見て滅んでいくのがよいのか、
あるいは、腐海の拡大を止めるべきなのでしょうか?
 
このことは現在「環境に優しい」「環境と共生する」と私たちが軽く使っている言葉に対する問題提起とも考えられます。
 
 
自然は自浄作用がありますが、一方で人間の活動は自然の破壊を伴います。
 
自然破壊を止めるためには人間は滅びたほうがよいということになります。
 
非常に難しい問題です。
 
 
もちろん人類の存亡を脅かす腐海の拡大という問題が目の前にありながら、
醜いエゴで種族間で戦いを繰り返す人間の愚かさや命の大切さ、愛情、いたわりの心もうたわれています。
 
 
この映画から考えさせられることはたくさんあるのです。
 
 
さらに、実は「風の谷のナウシカ」にはアニメの原作があることをご存知でしょうか?
 
 
映画が公開されたのは1984年。原作の漫画は1982年から1994年まで。
 
映画の対象となっているのは原作全7巻のうちの2巻分にしか過ぎません。
 
原作の漫画ではさらに大きな歴史と、長い戦いと精神の葛藤が描かれています。
 
 
原作の序文は以下のような背景から語られています。
 
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ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業文明は数百年のうちに全世界に広まり巨大産業社会を形成するに至った。
 
大地の富をうばいとり、大気をけがし、生命体をも意のままに造り変える巨大産業文明は1000年後に絶頂期に達し、
やがて急激な衰退をむかえることになった。
 
「火の7日間」と呼ばれる戦争によって、都市群は有毒物質をまき散らして崩壊し、
複雑高度化した技術体系は失われ、地表のほとんどは不毛の地と化したのである。
 
その後産業文明は再建されることなく 永いたそがれの時代を人類は生きることになった。
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ナウシカの時代は現代の1000年より先の話なのでしょう。
 
序文では戦争により有毒物質が撒き散らされたことにより文明は崩壊し地上は汚染されたとのことですが、
なんだか、放射能汚染のようにも思えないでしょうか。
 
そのように仮定すると、大地は汚染され、腐海という森が浄化するのに
1000年の時がかかるということが、何だか現実のように思えてきます。
 
 
腐海という森や王蟲をはじめとする蟲達。
 
それを守ろうとする人々、それに対抗しようとする人々。
 
高度文明をつくり崩壊した古代の人々。
 
生と死、汚染と浄化、エゴと思いやり。
 
文明の進歩と崩壊。
 
未来の理想を描く人と現状を維持しようとする人。
 
変わりたくても知恵や知識がない人々。
 
全く異なる文化を持つ人々の価値観。
 
 
「風の谷のナウシカ」の原作では、対立するさまざまな価値観が渦巻く様子を、
詳細に、そして素敵な絵で描かれています。
 
 
そして最後のシーン。
 
全ての謎が解けたナウシカは、強い決意を持って、ある行動をします。
 
 
その行動は正しいのか、間違っているのか。
 
 
 
私は正直すっきりはしませんでしたが、それも一つの宮崎さんの主張なのかもしれません。
 
 
ナウシカがあるとき、蟲使いの人たちとの会話のあとに漏らした一言が私は最も印象的でした。
 
 
「ああ、私たちはなんて沢山のことを学ばなければならないのだろう」
 
 
この名作から私たちは多くのことを学べるでしょうし、もっと多くのことを学び続けなければならないのです。
 
 
原作をまだ読まれたことが無ければ、ぜひ一度読まれてはいかがでしょうか?
 
「ワイド版 風の谷のナウシカ7巻セット」
 
 
偶然でしょうが、映画「風の谷のナウシカ」の公開日は3月11日だったとか。
 
30年経っても、色褪せるどころか、さらに深みを増しているようです。
 
 
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